| 若葉学習会専修学校報 「泉」 2012 March |
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毎年東洋大学が全国の学生から募集する「現代学生百人一首」は、今年25回目を迎えた。去る1月に当選作が発表されたが、当然百首である。しかし応募総数六万首にもなり、大きな注目と関心を呼ぶ新春の恒例行事になったといっていい、私個人の嗜好から言わせてもらえば、「歌会はじめ」より数段に好きである。なによりここには現代を生きる「わかものの声」がある。うまくはないかもしれないが、新鮮で、飾りのない心情が熱く胸を打つ。今年は鳥取県からは44首の応募があった。島根県が0であったのが残念だ。埼玉からは1万首の応募があったという。来年への期待も大きい。 震災の復興支える技術者を 目指して今日も高専で学ぶ 徳島 高専1年 福田 傑 震災後あの日のままの体育館 浮かぶ景色とつのる想いと 宮城 高2 板橋 蒼 顔知らぬ名前も知らぬ人たちに 生きててほしいと願った三月 山形 高2 門脇 優衣 被災地となった故郷を前にして 震える母の肩を支える 東京 高2 辻本 有紀 震災で採用増える公務員 少しうれしい自分に嫌気 山形 高2 門脇 優衣 「生きる」ことへの決意や想いを溢れるように歌って見せる素晴らしい歌も多かった。悩み、恨み、後悔し、反省し、立ち上がるそんな時代を頷くように理解できる。 胸に湧く喜怒哀楽はどれもみな 生きる力の源となる 東京 高1 阿武菜々子 人を見てすぐれたところまねてきた 多くの自分を置き去りにして 岡山 高3 多田 大輝 苦労すると言われて辞める夢じゃない 俺のこの手で畑を拓く 北海道 高3 大森 拓 トラブルも悩みも不安も失敗も リセットしたいゲームのように 岩手 高2 菊池 祐奈 実習で僅かに感じるミリの誤差 悪戦苦闘の鉄鋼削り 山形 高2 梅津 侑弥 青春のわれの心は不規則に 転がり続けるどんぐりのよう 東京 中2 伊藤 駿佑 「優しいね」友達にはそういわれたが 違う私はただ弱いだけ 東京 中2 飯沢 菜侑 今年家族を詠んだ歌も多く入選した。そこには笑いと、哀感とが交差している。その向こうにこうした頃も確かに家族にあったと言う憧憬のような想いも交錯する。思わず肌を温めるようなぬくもりや、取り返しのつかない愛惜の日々が次々と展開する。読んでいると昔のおもちゃ箱をひっくり返したような懐かしさが攻めてくる。 朝起きてトマトにキュウリナスゴーヤ 朝市思う祖父の縁側 千葉 中1 脇見 聡太 鏡見て思わず笑うその形 慣れないネクタイ父に教わる 千葉 高1 上坂 樹 夏祭り家族で並んで歩いたら カランカランと下駄もおしゃべり 東京 中2 三浦 理花 韓流がにっこり勧めるCM見 酒飲めぬ母ダース買いする 東京 高3 中島 渉 田舎からカボチャが届くふっくらと 祖父母のまるい背中のような 東京 高2 北原 奈菜 命日に網戸にとまり鳴くセミは 祖父の化身としばし聞き入る 愛知 高3 服部 有 不器用なひとり娘の親孝行 末期の父へのガードショコラ 大阪 高1 井上 智子 「おかん、おれ」意味なく電話してしまい テレカが尽きる寮のおきまり 奈良 高2 小宮山 智 海外の父とメールで会話する 会って話すより素直になれて 山口 高1 平田 恵莉 進学のために仕事を増やす母 疲れた横顔見るのがつらい 岡山 高3 田中 琴梨 そしてやはり若いから定番は進路や初恋のものがたりになろうか。さわやかに、でもその想いが両手ですくえるようにわかる歌がほとんどだ。人を恋する時のあのときめきのような日々は、なぜ若い日のものなのだろうか。歳を重ねてあれほどに純粋に弾む心を忘れてしまったのかも知れない。 旅を終わり疲れて眠る君の顔 これも一つの隠れた絶景 埼玉 高3 中村 元哉 冬の日に共に歩いた雪の道 歩幅をあわす君はもういない 千葉 中2 雨宮 佑弥 会えるかな淡い期待をそっと抱き あの道今日も遠回りする 千葉 高3 十川 栞 告白のできない恋は五分咲きの キンモクセイのただ香りだけ 新潟 高1 本永 康彦 不器用な君がつくったスパゲティ 少し無理しておかわりをする 長崎 中3 村上 玲奈 進学、就職、学校生活、日々の心、この時代にだけ許されたような歌材といっていい。ここにもそうした感情が普通の言葉で、しかし鮮やかに読み込まれている。 7月は空っぽだったポケットを 単語カードが独占している 茨城 高3 高塚 信治 模試前の不安な気持ちに比例して 付箋が増える私のノート 愛知 高2 近藤 紗矢 「受験生」と呼ばれる時が来る前に 会っておきたい本気の自分 広島 高2 小塩理緒菜 落ち込んだ模試の結果のC判定 鉛筆十本黙って削る 長崎 高3 林田 陸 笑いあう友達よりも本当の 私を知ってるツイッター 千葉 高3 木下 果林 友達と空き缶並べて語る夜 卒業の日は近くに迫りぬ 東京 大4 飯島 真郁 高望みすればするほど席がなく 就活帰りの満員電車 静岡 高2 藤野 恵美 十五夜の雲の海から出た月を 必死に取り合う街のビルたち 大阪 高3 池田 俊幸 六月のよどめる雲の間から あじさいの花に光差し込む 神奈川 中2 刀称 光輝 飲みかけのラムネのビンを傾ける ガラスの中で揺れた夏空 東京 高1 山内 志織
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